指導員・会員の総括

宗形真紀子 麻原彰晃とわたしの魔境

■ おわりに

 オウムの総括文章に、「麻原彰晃とわたしの魔境」というタイトルをつけたのは、わたし自身こそが、麻原と同じように魔境に陥っていたと、やっと気づいたことによります。

 5年前、オウム・アーレフ教団を脱会する前、事件を直視し、麻原の絶対性を否定していった上祐氏に反発した「反上祐派」から、上祐代表と、その活動の手伝いをしていたわたしなどは、「魔境」「悪魔がとり憑いてる」と糾弾されました。

 その時、反上祐派や、彼らの崇拝する麻原ともども、わたしが「魔境」であることに気づき、彼らの姿の中に、オウム時代の過去の自分の姿や、宗教テロを行った彼らの崇拝する麻原の姿が見えてきました。

 その、魔境の中にあった、わたしも、麻原も、麻原を信奉する反上祐派も、傲慢で、自己中心的で、自己を過大視し、特別視し、絶対視し、誇大妄想的で、被害妄想的であるというような共通する特徴を持っていました。

 この特徴が、オウムの起こした宗教テロの一つの大きな原因だったと気づいてからは、この心の根を一人一人が絶っていくことが、二度とオウムのような過ちを犯さないための、重要な償いの一つとなるのではないかと考え、その心の根を絶つことを、脱会し「ひかりの輪」となってからの、重要な活動の一つとするようになりました。

 そのための一つとして、現在わたしは、ひかりの輪において、大自然や神社仏閣などの聖地への巡礼を担当させていただいています。大自然に触れることは、「魔境の回避」に大変有効なことがわかってきたのです。そして、それを防ぐために、仏教の非我・無我思想の教本の編纂を行っています。

 最後に、そのことについて述べさせていただき、今後の償いの決意とさせていただきたいと思います。


●オウムの魔境・増上慢・自我肥大の問題

 宗教学者・心理学者の研究では、修行者が、修行の過程で、「自分が宇宙や神といった絶対者に合一した」という誇大妄想に陥るケースがあるとされています。これが「魔境」です。そして、いろいろ調べていくと、さまざまな「魔境を回避する工夫」の記録があることを知りました。

 心理学者ユングは、これを「自我(自分)とセルフ(全体・絶対者)を混同した状態」と位置づけていました。ユングが研究した禅では、この状態を「増上慢」と呼んで、それを防ぐために、禅の僧は、宇宙的な意識を探求しつつも、「それと自我は別のものである」という考え方をするということが述べられていました。
 
 宗教学者・思想家の中沢新一氏によると、ヒンドゥー教・ヨーガでは、大宇宙との合一を目指すために、その「神秘体験」の結果として、同じような誇大妄想に陥り、「自我が肥大してしまう」恐れがあるとされていて、ヨーガは、自己の内部に「真我」(アートマン)という「絶対的な存在」を認めるために、人によっては、自己を「絶対的存在と合一した」と混同しやすいということでした。

 まさに、オウム、麻原は、この「自我の肥大」に陥ったに違いないと思いました。また、わたしも、似たような状態に陥ってしまっていました。

 他にも、過去の歴史において、さまざまな修行者は、「魔境」「増上慢」「自我の肥大」の問題に対し、いろいろな取り組みをなしてきたことを知りました。日本においては、先ほどの「禅」だけでなく、自分を「悪人」と謙虚に自覚する教えを説いた親鸞の「浄土真宗」がありました。


●魔境・増上慢・自我肥大を防ぐ実践

 その、魔境・増上慢・自我肥大を防ぐ実践として、ひかりの輪では、現在、以下のことを行っています。


(1)特定人物を絶対者としない人間観を持つ

 これは、「最終解脱の存在」の否定です。人は一生、「不完全で、悪業がある」ことを自覚して生きていくことが大切です。


(2)すべての存在を尊重する世界観を持つ

 自我が肥大すると、麻原のように、「自分こそが、神と合一した、神の化身である」という傲慢な意識に陥ってしまいます。よって、そのような過ちに陥らないように、すべての人々や存在に、「神仏の現れ・仏性」を見いだして、尊重して生きていくことが大切です。


(3)仏教の非我・無我思想を重視して学ぶ

 「私は存在しない」「私には実体がない」と考える、仏教の無我・非我の思想は、「自我肥大」に陥る危険性を防ぐ画期的な教えと考えます。


(4)大自然の中での修行の重視

 大自然や、聖地を巡礼し、それらに触れ合う中で、

・人は、あくまで大自然の一部であるという謙虚な自覚を培い、
・特定の人間ではなく、大自然に「神仏」を見いだし、
・自然の中のさまざまな生き物が、まさに「自然に生きている」ことに学ぶ、

ことを行っています。

 今後も研究を深め、有効なものは、どんどん取り入れて戒めとしていくつもりです。

                             2008年9月4日
宗形真紀子

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