『実話GONナックルズ』「当時、元代表への信仰があり、私は自覚的にウソをつきました」07/2/28
2007年02月28日
本日(2月28日)発売の『実話GONナックルズ』(ミリオン出版)→
に、ジャーナリスト・及川健二氏による
上祐代表へのインタビュー記事が掲載されましたので、
以下に全文をご紹介します。
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上祐史浩インタビュー
「当時、元代表への信仰があり、私は自覚的にウソをつきました」
取材・文◎及川健二
撮影◎飯田勇
オウム真理教(現・アーレフ)による地下鉄サリン事件から12年が経った。犯行に関わった信者はのきなみ逮捕され、公判を通じて教団が関わった事件の全貌はほぼ明らかになっている。
オウムは89年11月に当時、対立関係にあった坂本堤弁護士一家を殺害し、94年6月には長野県松本市でサリンを撒き7人を殺害し、95年3月には東京の
営団地下鉄電車内5車両でサリンを噴霧し12人の命が奪われた。他にも教団と敵対する人物へのVXガスやサリンをつかった攻撃や、拉致・殺害が明るみに出
ている。教祖だった麻原彰晃氏は2つのサリン事件をはじめ13の事件に関わった首謀者として一審・二審ともに死刑判決が下り、2006年9月15日に刑は
確定した。
オウム教団は96年1月に宗教法人としては解散させられたがその後も信者は残り、アーレフへと名称は変わり教団は続いている。一枚岩に見えてきたその教団
がいま、分裂の危機を向かえている。事件直後からマスコミに出ずっぱりになり、教団を擁護し続け、「ああいえば、上祐」といわれた最高幹部の一人、上祐史
浩氏が新団体をつくろうとしているのだ。
教団はいま、上祐氏に従う代表派(M派)、反上祐派(A派)、どっちもつかずの中間派の3派閥に分かれている。代表派は信者の2割程度だという。上祐氏は
麻原彰晃氏の神格化・個人崇拝を否定し、地下鉄サリン事件をはじめとするオウムの一連の犯罪を認め謝罪し、教団は仏教の原点に回帰すべきだと語る。
一体オウムの中でいま何が起きているのか。新しい教団とはどのようなものなのか。騒動の渦中にいる上祐氏に直撃した。
●新団体設立へ
――今年6月前につくるという新団体と現アーレフはどのような違いがあるのでしょうか。
上祐:昔の教団は麻原彰晃元代表(以下、元代表)をいわば現人神とした、麻原教でした。
オウムの何が悪かったのか認識して、それをなくす努力をしなければならないと私たちは考えています。
悪かったのは、一連の事件まで行うような、元代表に対する過度な個人崇拝や、社会・世界を善と悪の2つに極端に分けて考える善悪二元論といった宗教性です。
この2つが行き過ぎた結果として、地下鉄サリン事件をはじめとする一連の犯罪へと教団は突っ走ってしまった。私たちは、一連の事件は明らかにオウムの犯行であり、それは宗教的にも間違いで、被害者・遺族の方々に謝罪し、賠償に努めるべきだと考えています。
しかし、非代表派では、全部ではないですが、少なくともその一部は、オウムが事件をやった、元代表が指示したと完全には認められないという人がいます。ま
た、関与は認めても、元代表が語らない以上は、信者が事件を自分で総括してはいけない、本当には否定できないと考えている人はさらに多いと思います。
――ただ、アーレフは被害者に対する賠償を始めていますね。
上祐:1999年まで教団は賠償を拒否し、事件に対する関与も認めていませんでした。
賠償し始めたのは、私が教団に戻った、2000年からです。その前に、信者が共同で暮らす日本の各地域で、住民による反オウムの運動が起こり、教団を取り
締まり監視することを目的とした団体規制法が99年にできました。そういった外部の圧力があって、社会に対応しなければ教団は潰れてしまうという状況にな
りました。
その後に、賠償を始めたのですが、その動機は、部分的には、というか、人によっては、事件の反省に基づいたものだったと思いますが、全体としては、一番の
動機は組織の存続であって、そのために、それまで踏み切ることができなかった賠償を始めたということができると思います。よって、全く表向きというわけで
はないのですが、端から見れば、表向きだけの賠償と見られてもしかたがないと思います。
――上祐さんがつくる新団体は、被害者へどのように対応していくつもりですか。
上祐:新団体になっても、謝罪・賠償を続けていきます。また、新団体の思想・宗教性が、事件の反省に基づき、これまでのオウムとは大きく違うことを示すことも必要だ、と思います。
●最悪の事件、その真相
――サリン・プラント建設に関わった信者・滝澤和義氏の裁判では、麻原氏、故・村井秀夫氏、新実智光氏、遠藤誠一氏と上祐さんが93年8月会議を開き、サリン開発について話し合ったという証言が出ていますね。
上祐:誰
がいたかまで正確に覚えていませんが、そのような場に私がいたことは事実です。ハルマゲドン預言を成就させるための教団武装化計画の一環として、生物化学
兵器が論議され、その一つとしてサリンの名があがりました。ただ、その後の計画の具体化については、私はロシアに行って布教していたために、関与しない結
果となりました。
――オウムが坂本堤・弁護士一家を拉致・殺害した事件の真相を知ったのはいつですか。
上祐:事
件直後に、関与を明確に知らされたのではないのですが、それを示唆されたことがありました。それは、教団が暴力団でも使ってやったのではないか、と私が思
い始めて、元代表に不満を持って問いつめた時に、元代表は、関与を明言しない一方で、不満を持ってはならないという趣旨のことを言って、最後に、「分かっ
ているようだからな」と付け加えました。
具体的に、誰が、どのように殺害したのかを知ったのは、95年に実行犯が逮捕されてからです。信者が直接やったことは、その時始めて知りました。しかし、それ以前から、何らかの形で事件に教団が関与していることを示唆されていたというのが事実です。
――上祐さんは地下鉄サリン事件以後、マスメディアに出まくって、教団の関与を否定していました。しかし、オウムの犯行であることを事件後に知らされたといまでは認めていますね。
上祐:当時、元代表への信仰があり、彼の思想を信じていたが故に私は自覚的にウソをつきました。いわば、無理をしてウソを言い、教団を防衛していました。
しかし、その信仰を続けることに、道理を感じなくなったいまでは、ウソをつく意味は全くありません。
――地下鉄サリン事件を警察は事前に予測していたという説をどう思いますか。
上祐:地下鉄サリン事件までは予想していなかったでしょう。ただ、教団がサリンを持っていて、強制捜査をやるときに反撃としてサリンを撒く可能性があるという程度の情報収集はあったと思います。
94年に松本サリン事件がありましたね。河野義行さんが初めは疑われましたが、捜査の矛先は教団に向いてきました。95年1月1日に讀賣新聞が上九一色村の教団施設の近くからサリンの残留物質が検出されたと報じました。これは警察のリーク情報でしょう。
――95年の一斉強制捜査をオウムは事前に察知していたのですか。
上祐:警察内部にもオウム信者がいましたから、強制捜査が入ってくると教団は予測していたと思います。90年に熊本県警の強制捜査が教団に入った時は、捜査の前に警察官の信者からリークがありました。
●元代表からの脱却
――非代表派の信者の中では、上祐さんが公安警察のスパイではないかと疑う人もいると聞きますが。
上祐:非
代表派の幹部でも警察と接触している人は複数いますよ。問題の本質は、教団と警察の敵対関係を前提にしてしまうから、接触を持つことがスパイ行為であると
考えてしまうことです。つまり、スパイという言葉自体が、旧教団が説いた、聖なる教団と邪なる警察が敵対関係にある、という世界観に基づいています。
旧教団と違って、警察官を悪魔の手先として見ないのであれば、彼らは、教団の行く末を心配している「お巡りさん」と見えます。私をスパイという人は、私の
ように、彼らが信仰している世界観と違うことを言い出した者は、邪なる警察に取り込まれておかしくなったと思う方が、自分たちの世界を守りやすいからでは
ないでしょうか。
――麻原氏に対する死刑判決を「当然のこと」と評価しましたね。上祐さんは死刑制度に賛成なのですか。
上祐:非常に複雑なのですが、旧教団の事件さえなければ、死刑制度はない方がいいと言っていたと思います。生きていれば、人間は皆、改心する可能性がゼロではないと思いますし、途中で道を間違えましたが、本来は、殺生を否定する仏教を信仰していた者だからです。
しかし、これまでの経過を見ると、死刑廃止の気運が、日本でも徐々に高まってきたときに、教団が一連の事件をやったために、死刑廃止論が衰えました。そし
て、一連の事件を反省しない教団を見て、ますます日本の国民は、死刑の必要性を感じてしまいました。だから、日本で死刑が廃止されないのは、教団の自業自
得の罪であり、私たちは「死刑は望ましくない」といえる立場にはありません。「死刑は望ましい」という世論をつくったわけですから。
今後は、新団体を作り、悪かった人間も変わるんだということを皆に示して、その罪滅ぼしをしなければならないと思います。教団が、事件を起こし、反省もし
ないために、社会には、「世の中には、(オウムのような)とんでもなく悪いやつがいて、彼らは絶対に変わらない。だから、死刑にするしかない」といった感
情を広めてしまいました。
でも、これは社会を通常の布教では変わらない悪と見なし、ハルマゲドンを起こそうとした元代表の論理に、どこかで通じる面があるのではないかと思います。
いわば、私たちは、オウムの善悪二元論の世界に国民を引きずり込んでしまったのかもしれません。その贖罪として、新団体によって、善悪二元論を克服しなけ
ればならいと思います。
――麻原氏の死刑執行は信者にはどのような影響を与えますか。
上祐:私
は元代表への依存から脱却するように説いています。また、当然来ることだから、動揺してはいけないといっています。しかし、いまだに元代表を個人崇拝し、
奇跡的な復活を期待する信者の中では、ひどく落ち込む人、自暴自棄になる人も出てくるでしょう。とはいえ、社会に対して暴発する、という可能性は相当低
い、と思います。心配なのは、精神的な健康が損なわれことです。鬱状態になって、最悪は、自殺してしまうといったことが心配です。
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上祐史浩氏にかつての広告塔の面影は感じられなかった。
巧みな弁舌で相手をやりこめ論破した過去の氏とは別人のようだった。
インタビューしているとき、目線はずっと下にあり、こちらが投げかけた
質問に時折、窮し、頭を抱え悩み込むこともあった。
「上祐は嘘つきで、その本質はいまも昔も変わらない」そう口にする人
はいまでもいる。
教団の謝罪・本質的改革を実際にやってみせてからでなければ、つま
り変わったと口にするだけでは、世間の理解をえられないことを上祐氏
は重々承知している。
赦されることは一生ないかもしれない、しかしそれでも、悪人も変わるの
だと示すことが自分たちの行くべき唯一の道なのだと氏は語る。
テロ集団の懺悔、そして更生......。
誰も成し遂げたことのない難行に新教団は挑む。
日本のみならず、世界が注目している。
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◎及川健二氏ジャー
ナリスト、写真家。1980年生まれ、東京都生まれ。土門券賞を最年少受賞した写真家の今枝弘一氏の下で写真を学ぶ。2004年7月3日から2006年3
月25日までフランスに滞在し、リール政治学院・夏期特別選抜セミナーを修了、フランス国立パリ第九大学Dauphine修士課程で戦略的経営を学ぶ。著
書に『ゲイ@パリ 現代フランス同性愛事情』(長崎出版)、『沸騰するフランス』(花伝社)がある。